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 ■ 手づくり木工事典No.38 新工房探訪記 2 ■
以下は記事を転載したものです。
 
 新工房探訪記 2

 つづや工房 佐橋秀昭さん
さはし・ひであき
1948年岐阜県可児市生まれ。
自動車部品工場を営んでいたが 、
15年(※)ほど前に蛍の養殖や
農業などの仕事を始める。
その後、木工関係の会社に勤めたり、
技術訓練校に入って木工を学ぶ。
1990年、以前使っていた工場を
木工房として「つづや工房」を開設し、
現在に至る。

(※ 1999年に掲載された記事です。)


 境保護意識から始めた、自然志向の家具づくり
取材・文/岸並 徹 撮影/富岡甲之
  部品工場経営から木工に転身
     
   岐阜県可児市内の国道41号線沿いに、草花や園芸品を扱っている「日本ライン花木センター」という施設が  
あります。 周囲は山々に囲まれ、付近には鵜飼で有名な木曽川も流れているのどかな所です。
このセンター内にある「アートスペースつづや」では、木工品や陶芸品など、さまざまなクラフトを展示しており、
同時にこの近くで「つづや工房」を開いている佐橋秀昭さんの、作品ギャラリーを兼ねています。
 可児市出身の佐橋さんは、元々は市内で自動車部品加工の工場を友人と共同経営していましたが、
15年(※)ほど前に方向転換を決意したと言います。 (※ 1999年に掲載された記事です。)
  公害という問題を意識したんです。昔は木曽川付近にも蛍がたくさんいたのに、河川工事などの影響からか
すっかり数が減ってしまったのを見て、水をきれいにしなくてはと思いました。」  
 仕事を替える決意をした佐橋さんは、工場経営を続けながら、蛍の保護や養殖をするようになり、やがて町を
離れて農業を始めました。また同時に竹細工を習い始めたそうで、このころ、クラフトづくりにも目覚めたようです。
 「でも、残念ながら農業と竹細工では食べていけなかった(苦笑)。だから2年少しで町に戻って、木工関係の
会社に勤め始めました。」
 木工の経験のない人が、いきなり木工品を作る会社に入れるのかと思ったら、「最初は営業や配達などの
仕事で入社して、やがて作業の仕事もやらせてもらうようになったんです。」とのこと。この辺りは、今は別の仕事を
しているがこれから木工の仕事に就きたい、と考えている人には参考になるエピソードです。
木工の仕事をやってみて、木工場での仕事だけでは飽き足らなくなった佐橋さんは、岐阜県内の木工訓練所
1年間木工を学び、卒業後も一時フラッシュ加工家具などを作る会社に勤務しました。
 「その後、以前部品加工をやっていた工場に木工機械を少しずつ導入して、1990年に『つづや工房』として
工房を開設したんです。」
 
  刺激になる陶芸家との共同制作
     
   佐橋さんの工房のスタートは決して順調というわけではなかったようです。初めのうちは注文はなくて、メーカー  
が作る量産家具の下請けの仕事が中心でした。
 
 そこで、6年(※)ほど前から、現在、花木センターのある場所で作品の展示会を始めたところ、周辺に住む人
たちからの注文が舞い込み始めたと言います。今は、'97年にできた花木センターで引き続きギャラリーを借りて
作品を常設するほか、自宅でも作品を展示しています。また、最近は岐阜県や愛知県などで個展・グループ展
を頻繁に開いたり、神戸のギャラリーに作品を置いてもらうなどして注文を受け付けています。地元で地道に
制作活動を続けていたのが、広く受け入れられ始めたということのようです。
 
 「作品づくりでは、いつも自然の感じを出すということを心がけています。木の自然の曲線に魅力を感じるん
です。これは自分の体質と言えるくらい一貫していて、直線的なものはほとんど作りません。」
 
 と佐橋さん。木工の道へ進むきっかけとなった自然志向は、ますます高まっているようです。ちなみによく使う材は
クリ、トチ、センなど。ナラも使いますが、自分とはあまり相性が良くない、とのこと。
木材は主に岐阜県の各務ヶ原市の市場で仕入れるほか、一部白川郷の奥で採れるものも利用しています。
また、塗装は拭き漆仕上げや着色オイル仕上げなど濃い色のものが中心で、和室に似合う作品が多いようです。
 
 佐橋さんが現在制作しているラインナップの中でも、代表作と言えるのが「飾り椅子」です。ウレタン仕上げを
施した高さ170cmほどの高い椅子ですが、背板にワンポイントの飾りを付けている点が人気を博しています。
基本パターンは、昔作っていた竹細工の腕を生かした竹籠をくくり付けたものですが、そのほかにもさまざまな
バリエーションのものを作っています。特に、最近多いのは陶器をはめ込んだものです。
 
 「5年(※)ぐらい前から陶芸家の方と交流するようになって、一部共同制作をするようになったんです。一緒に
考えながら作品を作ったり、既にできている自分の家具に新たに手を加えてもらったりして、いろいろなものを作って
います。自分で陶芸をやろうとまでは思いませんが、違う分野の作家さんと一緒に仕事をするのは面白いですね。
意見がぶつかって難しい部分もありますが、とても刺激になります。最近は織物を作っている人とも知り合って、
布を取り入れた飾り椅子も試作中です。」
 
 陶器のほかにもガラスやタイルなど、木以外の素材が融合した作品は、一味違った輝きを発揮しています。
もちろん、人間が作ったものとはいえ、決して人工的な感じがせず、何か古くて新しい魅力が漂っているような
気がします。
 
 これからやってみたいことについては、佐橋さんは次のように語ります。
 
 「流木だけを使った作品で個展をやってみたいんです。木曽川にも流木は多いんですが、自然が作った曲線
というのは、手にもって眺めてみると人間が人工的に作ったものとは全然違うんですよ。そういうものを生かして、
棚やチェストなども作ってみようと思案しています。流木は切ってみるとイメージが変わってしまうので、できるだけ
元の形のまま、家具の部材として使いたいんです。技術的には難しいものがありますけど。」
 
 佐橋さんの素朴な表情と穏やかな口調からは、自然への労わりの気持ちが伝わってきます。
その木工制作は、一層自然回帰的な方向へ進んでいきそうです。
(※ 1999年に掲載された記事です。)
 
 

こんな佐橋秀昭が作るこだわりの作品とは?

 
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